top of page

[JSCC] 上場デリバティブ清算業務における損失補償制度の見直しについて

Updated: Dec 8, 2020

日本証券クリアリング機構(JSCC)は、2020年7月に実施予定の上場デリバティブ清算業務における損失補償制度の見直しについて、2020年1月30日に公表した。


 主な見直しの内容は、他の清算参加者の破綻が発生した際、破綻参加者の建玉や担

保の処分等に伴い発生し得る損失を補償するための財源(損失補償財源*1)として、清算参加者が事後的に拠出を求められるキャッシュコール(特別清算料)の金額に上限を付すというもの。他にも、清算参加者の破綻により生じた損失を損失補償財源によっても補償できないおそれがある場合に、必要な銘柄・数量の建玉の期限前終了(パーシャル・ティアアップ*2)を行うことができる処理スキームを構築する。

 *1 損失補償財源には、保有建玉等の状況に応じ清算参加者が平時からJSCCに預託する取引証拠金・清算基金等の各種担保や清算機関による積立金(いわゆるSkin-in-the-Game)・市場開設者による損失補償といった事前拠出財源と、清算参加者が事後的に負担する特別清算料の事後拠出財源が存在する。

 *2 パーシャル・ティアアップとは、具体的に以下の2つを行うことを言う。

①破綻参加者が保有していた建玉のうち処分未了となったもの(対象建玉)について、期限前終了を行う。

②当該対象建玉の反対の建玉(反対建玉)を保有する清算参加者に対し、当該反対建玉の保有数量に応じたプロラタ方式にて当該対象建玉(割当建玉)を割り当てたうえで、当該反対建玉と当該割当建玉について、期限前終了を行う。


 本見直しの背景には、清算機関における再建・破綻処理等に関する近年の国際的な規制や議論にて、特にエクスポージャー水準が高い上場デリバティブ取引について、他の清算参加者の破綻時に清算参加者が求められる可能性のある事後拠出財源の額を事前に計測可能であることが重視されていること等がある。見直しを求める多くの清算参加者からの意見等を踏まえて、JSCCは2019年9月に国内外の15社の清算参加者を委員とするワーキング・グループを設置し、金融庁や日本銀行をはじめ、FIAやFIA JAPAN等もオブザーバーとして参加する中、数か月間に亘り集中的に検討を行った。今回の制度見直しは、当該WGの検討結果を取りまとめたものである。


 また、本見直しにあわせ、事前拠出財源を強化し、他の清算参加者の破綻時における清算参加者の負担を抑制する観点から、上場デリバティブ取引を対象とした各種担保(取引証拠金・清算基金)に係る計算方法について、諸外国の主要清算機関において広範に採用されているより保守的なプラクティス*3を導入することとし、JSCCにおけるリスク管理制度も総合的に強化する。

 *3 代表的なものを紹介する。取引証拠金については、その計算の想定として、保有日数(価格変動リスク)を1日分と見積もっているところ、2日分へ変更するとともに、過去データの参照期間を最大2年としていたところ、5年にまで拡大する。また、清算基金については、破綻参加者の想定シナリオを現行の「JSCCに対するエクスポージャーが最も大きい先と財務体力下位5先の同時破綻」から「上位2先の同時破綻」へ変更する。


 今般の上場デリバティブ清算業務における損失補償制度の見直しに際し、静 正樹(しずか まさき)日本証券クリアリング機構取締役副社長は、次のように述べている。「特別清算料に上限が付されること等により、清算参加者にとって、他の清算参加者の破綻による負担額を事前に測定することが現行制度より容易になります。また、取引証拠金の計算方法をより保守的なものとすることで、取引証拠金水準が一定程度増加し、デフォルター・ペイの原則(破綻により生じた損失を破綻した者の負担により補償するという考え方)が強化されることとなることも相まって、他の清算参加者の破綻により生じる清算参加者の負担額も現行の損失補償制度より抑制されることとなります。これらの取組みによって、市場参加者からのJSCCに対する国際的な信認を維持すると共に、引き続き国内外の多くの清算参加者に安心してご参加いただくことを期待しています。」

675 views
bottom of page